札幌南高13期東京同期会
13期元気会の仲間の交流の場
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面白かった本:「森茉莉かぶれ」早川茉莉・「父の帽子」森茉莉
いかにも森茉莉さんらしいエピソードに頬が緩みます。
刺激的なタイトルと、「最近、私は森茉莉の『贅沢貧乏』を思い出させる住まいを手に入れた」という1行に惹かれ、この本を読み始めました。 著者の早川茉莉さんは編集者で、「かぶれ」より「狂い」といえるほど、森茉莉さんに心酔している人です。
森茉莉さんに宛てた48通の手紙という形式で書かれたこの本には、「鷗外か漱石かと言われた千円札が夏目漱石に決まったとき、「鷗外一枚で○○を買う、なんて下品な使い方をされるのが嫌だから、漱石でよかったのだけどね。 でも、日本にもし金貨があって、そこに鷗外の横顔があればすてきね。」などといった、森茉莉さんらしいエピソードが紹介されています。 しかし、宝塚ファンがスターに宛てたラブレターといった風情の甘ったるい文章が鼻につき、読むのがしんどくなってしまいました。
ならば森茉莉さん本人の作品を読もうと思い立ちました。 僕の本棚にあるのは、『贅沢貧乏』『恋人たちの森』『私の美の世界』の3冊です。 読んだのは20代前半で、以後、読み返した記憶がありません。 代表作の1つであり処女作でもある『父の帽子』を読んでいないのに気づき、文庫本を求めてきました。
誤解していました。こんなに奥の深い作家だったとは。
『父の帽子』には、「パッパ」「おまり」と呼び合い、「私は父の膝の上で、葉巻の匂いのする着物の胸に片頰を押し付けたり、足を動かしたりしながら色々なお伽噺を、聞いた」といった、濃密な親子関係が描かれています。 写真で見る思索的な文豪とは別な、家庭人鷗外が垣間見えるのも、この本の大きな魅力です。
読んでいて一番驚いたのは、森茉莉さんの文体です。 森茉莉さんといえば、終生1920年代のパリを懐かしみ、下北沢の木造アパートをアパルトマンと呼ぶなど、アールヌーボー好みの、デコラティブな文章を書く人と思い込んでいました。 ところが、率直で芯の強さを感じさせる、文字通り明治生まれの文士といった文体なのです。
『父の帽子』の中で最も心惹かれたのは、「注射」と「半日」という2編の小品です。 「半日」は同名の鷗外の小説を題材としたエッセーで、父の『半日』を長い間読むことができなかった心情がつづられています。 鷗外の『半日』は、鷗外と妻志げ、鷗外の母をモデルにした作品で、「私の母の病的なヒステリーが最もひどかった時期に、父がその母を描いた小説」です。 茉莉さんは悪妻と評される母と反目する姑、その両者の血を引く惨めさゆえに、この作品を読めなかったと告白しています。
そして「注射」には、母と姑との間が冷たくなった遠因が述べられています。 茉莉さんが5歳のとき百日咳にかかり、4歳下の弟不律が死亡。 あまりに苦しむ茉莉さんを見かねて、祖母は医者に安楽死の相談をした…。 そのことが母志げの、そして茉莉さんの胸に滓のように残り、終生釈然としない心情を持ち続けたようです。
若い頃、森茉莉さんを読むのは、本好きの通過儀礼と思っていました。 しかし、今回『父の帽子』を読んで、それではすまない作家であることを思い知らされました。 (6組・林)
刺激的なタイトルと、「最近、私は森茉莉の『贅沢貧乏』を思い出させる住まいを手に入れた」という1行に惹かれ、この本を読み始めました。 著者の早川茉莉さんは編集者で、「かぶれ」より「狂い」といえるほど、森茉莉さんに心酔している人です。
森茉莉さんに宛てた48通の手紙という形式で書かれたこの本には、「鷗外か漱石かと言われた千円札が夏目漱石に決まったとき、「鷗外一枚で○○を買う、なんて下品な使い方をされるのが嫌だから、漱石でよかったのだけどね。 でも、日本にもし金貨があって、そこに鷗外の横顔があればすてきね。」などといった、森茉莉さんらしいエピソードが紹介されています。 しかし、宝塚ファンがスターに宛てたラブレターといった風情の甘ったるい文章が鼻につき、読むのがしんどくなってしまいました。
ならば森茉莉さん本人の作品を読もうと思い立ちました。 僕の本棚にあるのは、『贅沢貧乏』『恋人たちの森』『私の美の世界』の3冊です。 読んだのは20代前半で、以後、読み返した記憶がありません。 代表作の1つであり処女作でもある『父の帽子』を読んでいないのに気づき、文庫本を求めてきました。誤解していました。こんなに奥の深い作家だったとは。
『父の帽子』には、「パッパ」「おまり」と呼び合い、「私は父の膝の上で、葉巻の匂いのする着物の胸に片頰を押し付けたり、足を動かしたりしながら色々なお伽噺を、聞いた」といった、濃密な親子関係が描かれています。 写真で見る思索的な文豪とは別な、家庭人鷗外が垣間見えるのも、この本の大きな魅力です。
読んでいて一番驚いたのは、森茉莉さんの文体です。 森茉莉さんといえば、終生1920年代のパリを懐かしみ、下北沢の木造アパートをアパルトマンと呼ぶなど、アールヌーボー好みの、デコラティブな文章を書く人と思い込んでいました。 ところが、率直で芯の強さを感じさせる、文字通り明治生まれの文士といった文体なのです。『父の帽子』の中で最も心惹かれたのは、「注射」と「半日」という2編の小品です。 「半日」は同名の鷗外の小説を題材としたエッセーで、父の『半日』を長い間読むことができなかった心情がつづられています。 鷗外の『半日』は、鷗外と妻志げ、鷗外の母をモデルにした作品で、「私の母の病的なヒステリーが最もひどかった時期に、父がその母を描いた小説」です。 茉莉さんは悪妻と評される母と反目する姑、その両者の血を引く惨めさゆえに、この作品を読めなかったと告白しています。
そして「注射」には、母と姑との間が冷たくなった遠因が述べられています。 茉莉さんが5歳のとき百日咳にかかり、4歳下の弟不律が死亡。 あまりに苦しむ茉莉さんを見かねて、祖母は医者に安楽死の相談をした…。 そのことが母志げの、そして茉莉さんの胸に滓のように残り、終生釈然としない心情を持ち続けたようです。
若い頃、森茉莉さんを読むのは、本好きの通過儀礼と思っていました。 しかし、今回『父の帽子』を読んで、それではすまない作家であることを思い知らされました。 (6組・林)
コメント
[C880] 訂正を
- 2008-03-22 08:56
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[C869] 「父の帽子」
我が家には、残念ながら、この本がありません。
いつか読みたいと思いながら、いや読むのはもっと先にしようなどと今日まで来てしまいました。
ずっと若い頃に、鴎外の小説「青年」「雁」を初めて読み、鮮明で印象深い人物描写と共に簡潔な文章で物語が進むことに感嘆しました。その後、こちらでは「小倉日記」に一部目を通したまま、後は、希にぽつりぽつりと読みつつ鴎外全集(岩波)の背中を眺めているのですが、その端に筑摩書房の「森 鴎外集(一)」「同 (二)」があり、今日の午前は、「付録」の小堀杏奴「晩年の父」を久し振りに読み返したり、小島正二郎が「森鴎外」で語る森林太郎にまたまた圧倒的に圧倒され尽くして過ごしました。
以前、吉田健一との再会の機会を与えて頂いた時もそうなのですが、つい、こういう寄り道で手間取ります。(「金澤」は、付録の月報で観世栄夫「金沢でのこと」の文章を感心して読んで、それきりになりましたし。もともと生活総てが違い過ぎますし、時事批評のようなものくらいが私の理解力の範囲ですが。)
今回のご紹介記事を拝見して、融通の利かないことを思っていないで読んでみたらと自分に言ってみましたが( もう手持ち時間も残り少ないのだから、暢気にしていないで!と)、 どうでしょうか。
鴎外の口ひげにみる不機嫌な明治の家長はわれらにとおき 小高賢 歌集『家長』
これは、最近偶然見かけたものですが、生意気を言いますと、少々ピントが甘いような?私の解釈がずれているのかも知れませんが。9組小林
いつか読みたいと思いながら、いや読むのはもっと先にしようなどと今日まで来てしまいました。
ずっと若い頃に、鴎外の小説「青年」「雁」を初めて読み、鮮明で印象深い人物描写と共に簡潔な文章で物語が進むことに感嘆しました。その後、こちらでは「小倉日記」に一部目を通したまま、後は、希にぽつりぽつりと読みつつ鴎外全集(岩波)の背中を眺めているのですが、その端に筑摩書房の「森 鴎外集(一)」「同 (二)」があり、今日の午前は、「付録」の小堀杏奴「晩年の父」を久し振りに読み返したり、小島正二郎が「森鴎外」で語る森林太郎にまたまた圧倒的に圧倒され尽くして過ごしました。
以前、吉田健一との再会の機会を与えて頂いた時もそうなのですが、つい、こういう寄り道で手間取ります。(「金澤」は、付録の月報で観世栄夫「金沢でのこと」の文章を感心して読んで、それきりになりましたし。もともと生活総てが違い過ぎますし、時事批評のようなものくらいが私の理解力の範囲ですが。)
今回のご紹介記事を拝見して、融通の利かないことを思っていないで読んでみたらと自分に言ってみましたが( もう手持ち時間も残り少ないのだから、暢気にしていないで!と)、 どうでしょうか。
鴎外の口ひげにみる不機嫌な明治の家長はわれらにとおき 小高賢 歌集『家長』
これは、最近偶然見かけたものですが、生意気を言いますと、少々ピントが甘いような?私の解釈がずれているのかも知れませんが。9組小林
- 2008-03-13 22:10
- 編集
[C855] 森茉莉は、“女荷風道”の最先端を走っていたとか
林君の読書エッセイは、僕を未知の世界に導いてくれるので、楽しみにしています。
森茉莉という作家は今まで縁がありませんでしたが、偶然、二、三日前に読んだブログ記事、「荷風像の価値転換」の中に、<森茉莉は自らを「女荷風」と称して荷風の生活に憧れた>とあり、かなり個性的な作家と知ったところでした。
(「荷風像の価値転換」という記事は一読に値する面白い文章です。
下記の記事アドレスをクリックしてお読み下さいhttp://d.hatena.ne.jp/kanetaku/20080218#p1 )
野次馬根性を発揮して、この機会に、森茉莉の文学世界を確認してみようと思って、松岡正剛の「千夜千冊」の目次をのぞいたら、第154夜で、ちゃんと森茉莉の「父の帽子」を取り上げていました。
興味のある方は、下記の記事アドレスをクリックしてお読み下さい。
http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya0154.html
(佐藤 6組)
森茉莉という作家は今まで縁がありませんでしたが、偶然、二、三日前に読んだブログ記事、「荷風像の価値転換」の中に、<森茉莉は自らを「女荷風」と称して荷風の生活に憧れた>とあり、かなり個性的な作家と知ったところでした。
(「荷風像の価値転換」という記事は一読に値する面白い文章です。
下記の記事アドレスをクリックしてお読み下さいhttp://d.hatena.ne.jp/kanetaku/20080218#p1 )
野次馬根性を発揮して、この機会に、森茉莉の文学世界を確認してみようと思って、松岡正剛の「千夜千冊」の目次をのぞいたら、第154夜で、ちゃんと森茉莉の「父の帽子」を取り上げていました。
興味のある方は、下記の記事アドレスをクリックしてお読み下さい。
http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya0154.html
(佐藤 6組)
- 2008-03-07 08:22
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ちよっと、記事やコメントなど逆走して読み返していて、気付きました。
こういうことが本当に多くなり、悄気ます。9組小林